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…貴方は日々上手になっていく。
その度に…
嬉しくて声をあげるの…
……少し想い出させて
貴方の指が…
全てを愛でてくれる…
上から…下まで…
時に一部だけを激しく…
時に流れるように…
私は声を荒げて…
優しい吐息を…
……貴方に捧げる。
そして二人はひとつになるの…
今想い出しても…
……ぞくぞくするわ。
私は自分を…
自分で慰められないから…
貴方に依存していく…
…それが本当に
…………幸せなの。
貴方は幾度も…
私を愛でて…
私も…
身をまかせ…
貴方は私が逝ったのを…
満足そうに…
微笑んでいたよね…
でもね…
幸せって続かないの…
絶頂の後は…
堕ちていくしかないの…
…いつからだろう
私の声が…
違和感を持ち始めたのは…
解ってても…
自分では…
…どうしようもなかった。
貴方は次第に…
私に触れてくれなくなって行く…
寂しかった…
悔しかった…
鳴きたくても…
貴方無しじゃ鳴けないの…
もう一度…
調律して欲しかった…
そろそろ…
限界に達したわ…
最後に…
私から貴方へ…
調律師に来て貰う金ねぇなら…
………買うんじゃねーよ。
【見栄っ張り男のピアノの叫び】
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