『馴れ初め』

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 帰り道。特に何かある訳でない、普通の住宅街。道路。行き交う人々。  時間帯なのか、買い物袋を持ったおばさん、遊びから帰る子供などが多い。  空を見れば、日が落ちかけ空も朱色に染まっている。  ま、一度、学校から帰ってから来たんだから、時間帯はそんなものか。  俺は、そんな帰り道を、“2人”で歩いている。  隣りにぴったりと着いてきている、俺より凡そ40cm近く離れているだろう少女と。ちなみに、俺の身長が大体、170cm だから少女は130cmぐらいか。  これを端から見たらどう映るのか。微笑ましい兄妹か。或いは幼子を連れてく誘拐犯か。  ……普通に前者だろう。俺が、四十過ぎのおっさんならともかく、まだ17だ。兄と見られるのが極々自然の筈。  まあ、そんな事はどうでもいいか。別に気にする事でもない。 「――しかし、本当に、帰り道一緒だったんだね」 「ふふっ、私の直感、結構当たるんですよ」  これ――帰り道が一緒という事だが――には多少にびっくりした。何せ、どうせ最初の曲がり道ぐらいまでが一緒だろう。なんて思っていたのに。気付けば既に近所の辺りまで来ている。  ……実は、この娘は御近所さんじゃないのか。なんて思う。しかし御近所にこんな年頃の娘がいるなら妹の友達にでもなっている筈だし、俺も知っている筈―――。  ま、御近所付き合いなんてのが存在する時代でないし、極力は避けて付き合うのがこの御時世。知らない御近所さんぐらい、一つ二つと在るだろう。  ―――と、思考をしていたら、大きな洋風のお屋敷が見えてきた。  あのお屋敷は、御近所でも有名な富豪の家で、そのくせ、それを鼻にかけないとても人が出来た人が住んでいるんだとか。  家族構成は知らないが、噂によればメイドさんがいるらしい。……ま、俺達一般人とはまるで関わりのない存在だ。  ちなみに、確か、名前は――金玉利(かねだまり)だったと思う。  ――そうこうと考えていたら、その神流さん宅の前まで来た。うむ、目の前から見たらまさしく壮観。俺なんかじゃこのような家、長い人生あっても、一度とて住めないだろうな。  ―――なんて思っていたら、とんでもない言葉が聞こえてきた。 「あ、此処が私の家です―――」  ……はい?
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