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「―――あ、けど条件があります」
何かを思い出したかのように、そう俺に告げる少女。
……条件?
俺は、その言葉が気になり、条件とやらを聞いてみた。
「ええと、その。
……まず、貴方の名前を、知りたい、です……」
恥ずかしいのか、照れているのか。それとも夕焼けに照らされてか、少女の頬が紅くなっている気がした。
そして、少女は条件を口に出した。
しかし、出した少女の声は、段々と消えていきそうなほど、繋げれば繋げるほど掻き消えそうな小さな声になる。
最期の方はもう、聞き取れないほどだ。
―――けれど、何が言いたかったのかはわかったから。だから俺は、答えてあげる。
「煌。神無月、煌。神の無い月に煌めくと書いて神無月煌だよ」
ハッキリと。ちゃんと、聞こえるように。出来る限り、優しそうな声で。
「煌、さん。神無月――煌さん……」
少女の顔に、笑顔が宿る。そして、俺の名前を繰り返し、確認するように。何度も呟く。
何だか、とても可愛らしくて。何だか、とても、守ってあげたい感じ。
あ、それは勿論、妹のような、そんな表現でだ。他意はない。というより、他意があったら犯罪だし。
それに、俺には幼女趣味は無い。可愛いと思えどそれは子供を可愛がる親の心境みたいなものだ。
そう、それ以外は―――て、これだけしつこく言っていたら逆に怪しいな……。
「良い名前、ですね」
「普通だよ、普通。けど素直に受け取っておくよ。ありがとう。ええと―――」
「さ、朔梛! 御守朔梛(みかみさくや)です」
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