『運命の、出会い?』

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 意識を再び背中へ持っていく。少女(だと思う)は完全に自分がどのような状況なのかも忘れているのだろう。  何せ――恐らく全裸のままで俺の背中に張り付いてるのだから。何が少女をそうさせてるのか。  神経を研ぎ澄ませてみた――という訳じゃないが、不意に気付いた。少女の体が震えている事に。  まるで何かに怯えてるかのようだ―――。  と、そこで思い出した。少女が何を言いながら走ってきたかを。  そう、少女はこう言ってたではないか。「ゴキブリ嫌だ」、と。  そして少女がまだ震えているという事は――此処にまだいる。  ならば話しは早い。あの黒き悪魔――ゴキブリを倒してしまったらいいと。  俺はその考えに行き着くと何故か靴篦と一緒に置いてあった棒状に丸めた新聞。まるで最初から憎きアレを倒す為に用意されていたかのように。  そして俺は構える。新聞を、この上なく最強の武器と変えて―――。  ――神経を研ぎ澄ませろ。どんな気配も逃すな。俺は全てを見つけ倒す者。彼奴を討ち取る世界の使者。  ――同調・開始(トレース・オン)。  意味もなく、けれど神経を更に研ぎ澄ませ集中力を上げる為の魔法の呪文、それを言葉に出さず唱えた。  ……いやまぁただ単に漫画の主人公が言ってた事を真似てみただけなんだけどな。  右方向からかさり、と何かが動いたような音が聞こえたような気がした。  俺はすかさずそちらへ向き直る。手には何もないただの丸めた新聞。  ――――――いた!黒く、そしてどこか不気味な光沢を持つ悪魔――ゴキブリが。  俺は少しも物音を立てないよう、静かに、まさしく静寂と呼べる動きでゴキブリへと迫る。  そして新聞がゴキブリへと届く位置へと着た。  ――よし、行くぞ。 「うらぁっ!」  新聞がゴキブリへと振り下ろされる。縦に振り行く力と、少しだけだろうが加算になると考えられる重力が相成って音よりも速く、空気という地面を駆けた―――。
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