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――ぐちゃり、と生々しい音。新聞を地面から離す。潰れた黒いあくま。
黒いあくまからは白い液体が出ていて、見るからに嫌悪感を抱かせる。
これは、後ろのお嬢さんには、見せられないだろうな。
未だパニック状態で俺の背中にしがみつき、それに顔を埋(うず)めるようにしている少女を思い浮かべた。
……という訳で、とりあえず、自前のティッシュでそれを拾い、ゴミ箱へ捨てた。
――――よし、完了。
後は―――
「さ、お嬢さん。目を瞑っておくから早く更衣室に戻って着替えて来い」
―――この少女を、どうにかするだけ。
俺は、言うとすぐに、公言どうりに目を瞑る。
……未だ少女は反応なし。背中から離れる気配もない。震えは収まっているが、その代わり微動だにすらしない。
少女はまだ、恐怖から抜けれていないらしい。しかし、何故か背中が熱い気がするのは気のせいか?
―――と、背中から掠れた声……というより呻きのようなものが聞こえてくる。「あ、う……い、い、し、し―――」と言った感じ。
何が言いたいのかがわからん。とにかく、目を瞑ってるうちに早く更衣室に戻りなよ。と言う気持ちで一杯だ。
背中に感じるのは微かな凹凸(おうとつ)。全体的な大きさから見て小学生。大丈夫、これなら十分に耐えれる。
けど早く離れてくれるに越した事はない。
そう、思考していたところへ―――
「――しっ、失礼しました―――――!」
爆弾を投下したような大声。それが直ぐ近く――少女から聞こえてきたかと思うと、すかさず俺の背中を離れ、女性用更衣室へと戻って行った―――。
……なんか、汗をかいたせいか喉が渇いたな。もっかいコーヒー牛乳でも飲んでくか。
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