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「…はっ、」
ーー滑稽やな。
家は金持ちかもしらんけど、自分はお金に無関心なんやから。
馬鹿馬鹿しすぎて、笑えるわ。空腹も手伝って、こんなに気分悪いことはないな。
「な…、何笑ってんの!」
さっきからうるさい女は、何故か顔が青ざめている。そしていきなりグーで頬を殴ってきた。痛いやないか。
口の端、切れたし。鉄の味がする…、不味いな。
今の状況がおかしすぎて、笑いが止まらない。
笑いがら距離を詰めていく。最高に機嫌が悪いねん。頭上に広がる青空とはミスマッチな自分。
「何、要するに…ひがみ?思考、結構幼稚なんですネ」
「な……っ、お嬢様は黙っててよ!」
また怒らせたか?
正面に立つ女の後ろから、女二人が一斉につかみかかってくる。
さすがに二人は止められないーー、勢いが強すぎたのか二人もろとも倒れ込んできた。
運悪く、後ろにあった屋上のタンクに頭が思いっきり当たる。
薄れゆく記憶の中で、頭に手をやると生暖かい感触があった。そう、それは血だった。
…また、鉄分が。
意識を手放した捺を見て、三人はパニクる。
倒れてる捺を起こそうともせず、あーでもないこーでもないと話してたらーー
「…おい」
後ろから随分と低い声がした。
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