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「かずき! プリンもってこい。プリン」
頭の上から、名前が呼ばれた。顔をあげ、声の主を見上げる。
神様だ。
神様は、ぼくの家の神棚に住んでいる。たとえ、手のりサイズだとしても、茶髪でロン毛でピアスをしていても、よれよれのジーンズにTシャツを着ていても、これは神様だ。出会いは? ときかれても答えに困る。気づいたら、そこにいた。好きなときに姿を現す。ぼくはその存在に、なんの疑問も抱いたことはなかった。
「プリン! プリン! プリン!」
ぼくが無視していると、神様が騒ぎ始めた。
「自分で持ってきてください」
「かずきと一緒に食べたいんだ。一人で食べるより、何倍もおいしいじゃん。な?」
神様がにこりと笑った。
めんどうくさがりで、お神酒を飲んでは酔っぱらって踊るし、昼寝が大好きなぐうたらだ。けれど神様は笑う。一番優しい言葉と一緒に笑う。どんなに心が硬い人でも、ふわりとやわらいでしまう。そういう笑みだ。
しょうがないなとプリンを取りに台所へ向かう。神様が笑いながらついてくる。
これがぼくの日常だった。この冬一番の寒さがやってくるまで、神様の存在の意味など、考えたことはなかった。プリン好きでぐうたらな神様がそこにいる。それでよかった。
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