出会い

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10分も経っただろうか。僕には永遠のときにさえ感じたのだが……。 やっとのことで大学病院に到着しました。 大きな赤い文字で救急専用入口と書かれた自動ドアの側で待機していた看護師に救急隊員がこう告げました。 「西条ミカさん、23歳、女性。交通事故による腹部損傷。大量出血による心肺停止、意識レベル1です」 「はいっ!」 そう言った看護師は手際よくミカを乗せたストレッチャーを押して救急処置室へと入っていきました。 僕はその後を全速力で走って追いかけました。 余りの勢いで走ったので、通りがかった女性と肩がぶつかり、女性が倒れ込みました。 「あっ、すみません!!」僕はそう言って近くに落ちていた女性のものだろう処方してもらった薬の袋を手渡し、足早に去りました。 僕は処置室には入れないので、廊下で呆然と立ち尽くしていました。 すると、何人かの看護師や医師が入れ替わり立ち替わりして慌ただしくミカの治療しています。 そして、処置室から出てきたひとりの男性医師が僕の側にやってきて、こう聞きました。 「お宅はミカさんのご家族の方ですか?」 「いえ、ミカの彼氏です。ミカは助かりますよね?助けてくれますよね?どうなんですか、先生」 「残念ですが、非常に危ない状況が続いています。追突の衝撃で内臓がつぶれていて、肋骨が肺に刺さり……。ミカさんのご家族に連絡していただけますか」 僕は信じられなかった。 数時間前、僕に微笑んでいたミカが脳裏に焼き付いていた。 ミカが死ぬはずがない、そう信じたいのはやまやまだったが、今のこの現実を受け止めなくてはいけない。 僕は急いで公衆電話まで行き、震える指でミカの実家の電話番号を押した。
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