華の街、アルベイン

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婆さんは空中に、右手の人差し指と中指を揃え、『火』と書く。 チョキの手を閉じた感じだ。 すると、決して強くはないが、穏やかな火が発生した。 「ボクも知らなかったよ…」 霰も知らなかった。 ということは、この世界では、《魔法はペンを使う》という先入観が有るのだろう。 「ワシも、上級の魔法使いじゃからな」 ひょっひょっひょっ、と笑い、自慢気だ。 ここで俺は疑問を感じた。 どうしたら、上級者とか判るんだろう。 尋ねてみた。 「それはじゃな、一概には言えないのじゃが…ペンの数じゃな。」 「少なければ、なくなっても空中で書けると言う事じゃ。」 霰も聞く。 「空中に書くには、どうしたらいいんですか?」 「それは自ずと解るじゃろ。 やり方を教えても皆同じじゃないからのぉ…」 どうやら、一人一人空中に書けるようになるには、何かが必要で、更に個人差があるらしい。 俺達はお礼を言って店を出た。
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