魔王

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「あーあ。やんなっちゃうよなぁ」  となりを歩いていた、たくやが、ぶつくさ言った。 「ほんとだよ。毎回、小テストやるなんてさ。ひどいよ」  ぼくが答える。 「ぼくたちは、テスト受けに学校行ってるんじゃないっての。学校なんてなくなればいいのに」 「だよね」 「じゃあな、けん。またな」  いつもの別れ道で、たくやが手を振る。大きなランドセルを揺らして、駆けていく、その背にぼくも手を振った。くるりと振り向いたとき、目の前に、男の子が立っていた。上から下まで、黒い服を着ている。 「学校を、消してあげようか?」  不思議な声だった。どこか引き込まれていくような、やわらかい声。 「きみ、だれ?」 「ぼくは、魔王」 (了)
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