魔王

3/7
前へ
/7ページ
次へ
 次の日の算数の時間。女子が、勢いよく手をあげた。 「先生。宿題、出さなくていいんですか?」  ぼくは一瞬、どきりとする。そして、心臓をばくばくさせながら、先生の答えを待つ。 「宿題なんて出していないわよ」  先生はけろりとした顔で言った。ぼくは心の中で、すごいぞ!と叫んでいた。  数日後、また、魔王は現れた。ぼくは言った。 「明日の漢字のテスト。なくして欲しいんだけど」 「きみの望むとおりに」  魔王は嬉しそうに笑うと、また、空気に溶けていくみたいに消えた。  次の日、当然のように、テストはなかった。せっかく作ったテストをなくしてしまったのだと、先生が言っていた。クラスのみんなは、わあっと喜んだ。ぼくが魔王に頼んでやったんだぜと、いばりたくなった。
/7ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加