Enigma

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青みがある髪が風に揺れて、彼はむすっとしてホコリだらけのその本を閉じた。 音をたてて窓を閉め、一時間ほど動かなかった身体を起き上がらせる。 彼は眠りから覚めて、ずっとそのまま本を読んでいた。 「ふぁ………」 まだ眠たい身体を伸ばしてあくび。 跳ねた髪には気にせず隣りに眠る大貴族『十六夜家』の一員である、双子を見た。 姿はない。 彼は思わず眉間に皺を寄せた。 彼らは次期当主候補。もう20も近い年の似ても似つかない人間。 なのに3歳は離れた彼と仲良しで、獰猛な双子の兄は相当頭が堅い。 勤勉で頭の酷く柔らかい弟ならこんな朝早くにいないのはわかるが、兄までいないとなると彼は驚いた。 夏休みに入ってから、居させてもらっている彼、雰咲 葵には初めての事態だ。 いつも双子の兄を起こすのは大変だったからでもある。 とりあえず着替えをしてから部屋を出ようと、葵は立ち上がった。
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