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席に座った葵はいただきます、と呟いてから朝食に手をつけた。
すぐ斜め前を見ると、数十枚の紙を整える優羽の姿があり、こちらに気付いたのかくすくす笑う。
「おはよう」
彼はもう一度言う。
葵は軽く頭を下げた。一緒に暮らしていても葵にとって優羽は当主でもあるが、登校する阿賀中学校の校長だ。やはり肩書きに言葉の壁は越えられない。
「部屋で作業しないんですか?」
「あぁ、…うーん、朱羅に追い出されてしまってね、」
『当主――――――!!』
『Σえ?何かあったのかい?』
『掃除するわよ!!退きなさいッ!!ほらほらぁぁぁぁ!!!』
『のわっ!!?』
「おかげで目が覚めたよ…。」
「…皆慌ただしいじゃないですか、何かあったとか…?」
「…あ、れ?恭香が言わなかったのかい?」
「いや…」
葵がそう言うと、優羽は目を細めて苦笑した。そしてテーブルに肘を突いて指を絡ませる。
「これからまた忙しくなるよ、葵君。」
何か含んだ笑いに、葵は眉間に皺を寄せた。
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