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雲ひとつない星空の下に連なる、雪化粧の山々。
普段の寮生活とはまったくかけ離れた景色に、心が洗われるようだ。
───これがプライベートだったら最高なんだけどな……。
って、何考えてんだ俺?
征紀とふたりきりで旅行。
……有り得ねぇ。
ふと脳裏を過ぎった希望は、即座に宥志自身によってかき消された。
征紀のことは嫌いではないが、いや、思わず欲情してしまうくらいには好きなのだが、なかなか気持ちに正直になれない宥志だ。
と、宥志がそんなことを考えていれば、いつの間にか征紀が背後に迫っていた。
「ねえ、宥志」
「おわぁっ」
突然耳元で呼び掛けられて、宥志は慌てる。
「あ、ごめん」
「いや…、びっくりしただけだ」
「何か考え事でもしてた?」
妙なところで鋭い征紀には感心してしまうが、もちろん何を考えていたかなど、言えるはずもない。
「別に、たいした事じゃねぇよ」
ちらりと視線を向けながら言えば、征紀はふうん、と呟いて宥志の隣に並んだ。
「綺麗だね」
「そうだな」
満天の星と白銀の雪山も眺めながら、ふたりは暫くの間黙り込んだ。
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