イヴの雪泥棒

6/6
前へ
/6ページ
次へ
最後のパッケージを裂いてから、家の前に車が止まったのに気がつき、俺は身を低くした。 雪が止んだからか、がらり、窓が開く。 こっそりと俺は、下にトナカイを投げた。屋根で寝転がる。 「雪は降らなかったが、なんとか仕事は終わったぞ」 親が帰ってきたようだ。 「えー、雪降ったよ! サンタさんがね、あっ、トナカイだ!」 よかった。見つかった。 「トナカイー?」 俺の頬が、突然濡れた。 雨粒が落ちてきたのだ。 はは、暖かいからって、クリスマスに雪じゃなくて雨が降るとはな……この分じゃ砂糖も溶けるな。雪じゃないってバレない、ラッキーだ。 「ええと、早くトナカイを拾ってあげなさい、濡れるから」 「はーい」 すぐに窓は閉まった。 ぐっしょりと体が湿っていく。とりあえず、下のやつらが寝静まってから帰ることにしよう。 サンタって、本当にいるのかな。いや…… サンタか、そうではないかの違いが重要なのではなく。 なにか奇跡みたいな、ちっこいしあわせを渡せるなら、誰だっていつだってサンタクロースなのかもしれない。 メリークリスマス。 それを知った俺は、きっと明日から世界が違って見えるはず。 なんてな。 けど、もっと真面目に働いてみるか。
/6ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加