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イヴに盗みを働くなんて、罰当たりなやつだよ俺は。
時刻は夜の九時。世間ではサラリーマンが帰ってきている時間帯だ。なのに、この一軒家には明かりが灯っていない。
この、そこそこの一軒家の持ち主達、おそらく家族は外食にでも出かけているんだろう。
街灯が多くはないこの住宅地、盗み初心者の俺が侵入するにはうってつけだろう。
イヴに盗みを働くなんて、罰当たりなやつだよ俺は。
心の中でまたうなるようにつぶやけば、ラッキーだ。
窓の鍵が閉まっていない。おそらく空気の入れ替えに開け閉めしてて施錠を忘れたんだな。
手袋よし、靴……靴は脱いでいこう。足跡で足がついては堪らない。そろそろと窓をずらすと、窓は渇いたのどを鳴らす。
失礼します。靴を脱いでフローリングに上がると、暖房の熱がコートに染み込んできた。窓は街灯と月の明かりをとるために開けておこう。
……ペットでもいるのか?
上で物音がしたような気がする。勘違いか。いやでも早くやってしまおう。
金目の物を探すか。何年か前にテレビの番組で見たことがあるんだ、引きだしの一番上にはほぼ確実に金目の物が置いてあると。
明かりが少ないからか、鈍色に光る電話の横に、引きだしを見つけた。
引いてみると、……あった。札がしまってありそうな、白い封筒がいくつか並べて置いてある。ひとつを窓へ透かしてみると、長方形の影。
思わず口笛を吹いてしまった。
「サンタ……さん?」
体が凍りついた。どんどんと冷や汗が湧いてくる。
「サンタさんだよね?」
幼い声。振り返ると、開いた扉の横、背格好は小学校低学年くらいの子供。よりにもよってサンタと間違えてくれているようだ。
「このことは秘密にしてくれ。早く寝るんだよ」
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