イヴの雪泥棒

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俺はよい子にプレゼントを与えるオッサンとは正反対の存在だな。 「サンタさん」 パジャマを着た子供が呼び掛けてくる。早く行け 「なんだい?」 「僕、プレゼントなんかいらない、いらないから……」 プレゼントを渡すつもりは毛頭ない。子供は自分の爪先を見つめた。 どうでもいいが親はこれから帰ってくるようだ。その前に逃げないと……! 「いらないから、なんだい?」 子供は爪先から窓に視線を移した。 「雪を降らせてください」 「雪っ……」 「雪が降ってきたら、ママもパパも帰ってくるんだ!」 雪が降ったら帰ってくる、そんな絵本みたいなことあるか。 「どういうこと?」 「ママとパパは、雪が降ったらお仕事終わるんだって……」 それはおそらく嘘だろう。だって今日の天気予報では雪は降らない。 「お願いサンタさん、サンタさんにはこの家にある好きな物をあげるから!」 窓の外には、よどみない濃い藍に浮かぶ月が輝く。
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