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俺は公園のベンチに座っていた。
寒空の下、震える身体。
赤いマフラーに鼻を埋める。
恥ずかしながら、彼女の手作りだ。
赤と白のストライプ。
クリスマスを先取りだ。
人々の行き交う通りに目を遣る。
クリスマスカラー一色の大通りに、親子連れが幸せそうに歩く。
子供の笑顔が眩しかった。
軽快なクリスマスソングに合わせるように、足取りも軽い。
苦笑いを浮かべながら子供に引っ張られる親を見送り、親はまた手元の求人誌に目を落とす。
寒さにかじかんだ指を這わせ、ページを捲っていく。
「短期で稼げるバイトは……っと…」
道路工事、ビル清掃、深夜の吉〇家。
どれも時給は魅力的だが……
「楽に稼げるバイト…か」
そんなに世の中、甘くないよな。
「ウェイター…ねぇ」
こんな寒い外で仕事なんか出来ねぇ。
暖かい店内でやれる、ってだけで十分だろ。
番号を確認し、ポケットから携帯を取り出す。
「~~~♪」
呼び出し音を聴きながら、ベンチを後にする。
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