第四章 直死の眼

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『リオ、悪霊の気が近づいてます…注意を』 「ああ、なんとなく判る」 理緒はセレーネを剣に変換し、腰に携える。 「…オーガか?」   学校の帰り、セレーネの警告に理緒は人気のない路地裏に入り込み、臨戦の構えをとる。 次第に邪気が強まってくる。感じ取れる気配は二つ。 一つは既に理緒の前に姿を現していた。 『間違いない…オーガクラスです』 以前戦ったオーガとは違い、鬼のような姿、それ以外には筆舌し難い容姿をしていた。 鬼は、大人の胴ほどの太さのある腕を振りかざし、手当たり次第に辺りの物を破壊し始めた。 「…継承者か…やればいいんだろ…やればっ!!」 理緒はセレーネの切っ先を、鬼の喉に突き入れた。 鬼は言葉にならない言葉を発し、赤黒い体液を喉の傷口から吹き出しながら、無散した。 「もう一体は!?」 理緒は周囲を素早くみやるが、それらしき姿は何処にもない。だが、確かに気配はする。 (悪霊…?いや、何か違う) 理緒はセレーネを本来の姿、天馬騎士に戻し、意識を周りへと集中させる。 「人…獣…?人狼じゃない…もっとヤバ気な奴だ…」 理緒の集中はそこで途切れた。路地裏のビルの上から、敵意の塊が飛び込んで来たからだ。 理緒はその姿を見て美しいとも、恐ろしいとも思った。 エメラルドの髪、雪のような白い肌、一糸纏わぬ『それ』は一見、神々しい程の美少女の姿をしている。だが、その背には悪魔を彷彿とさせる漆黒の二対の翼が、彼女の存在をますますこの世ならざる者にしていた。 「クヤマ…リオ…貴方を…」 少女は、澄んだ声で理緒に話しかける。だが、その言葉は途中で途切れた。 少女は、理緒を熱い眼線で見つめ、次にセレーネを見る。 セレーネは少女を注意深く観察する…間違いない…彼女は… セレーネが結論を出す前に、少女は二人に屈託のない微笑を浮かべ、茜から闇に染まりつつある空へと舞い上がり、消えた―――
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