第一章 力の代償

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少女の言葉に戸惑いつつ、理緒は言われた通りに彼女について行った。   暗い夜道を歩いて歩いて、着いた場所は、酒場のような場所だった。 俗にいうバーと言うやつだ。   「お帰り、リーネ。また新しいメンバーを連れて来たのか?」 カウンター席に座っている少年が、理緒を脅迫(?)した少女に話し掛けた。 「この人、人狼に殺されたの。あと数時間もすれば、力と属性が現れるはず」 リーネと呼ばれた少女は、淡々と言葉を返すと、少年の隣の椅子に腰掛けた。 理緒はと言うと、少女を見、少年を見て、頭の上にクエスチョンマークを出現させている。 「ノリヒサ、彼は只の人狼に殺された訳じゃない。…フェンリル・オーガに殺られたの」 少年―ノリヒサは、驚きの目で理緒を見る。 その瞳に何か恐怖のようなものを理緒は感じた。 「オーガクラスの…しかもよりによってフェンリルに…。君、よく生きてたね」 「オーガ?フェンリルって?一体何なんだよ!?俺はただ、生きたければついてこいとしか言われてない。俺は死んだのか!?生きてんのか!?」 理緒はノリヒサの問いにカッとなった。 いきなり自分は死んだと言われ、言われた通りついてくれば、メンバーだの力だのフェンリルだのと、訳の解らない事ばかり言われる。 「貴方はさっき言ったように、死んだ。今は霊魂だけの存在。」 リーネは冷たい口調で理緒に事実を突き付ける。 「貴方を殺したのは、人狼と呼ばれる悪霊。ただ貴方の場合、最上級クラスのオーガに輪廻、簡単に言うと命を絶たれた。オーガクラスの悪霊に輪廻を絶たれた人間は、自らの霊魂が秘めている能力を覚醒出来る。…まあ、オーガクラスに殺された場合、九割は輪廻を外れて悪霊になるけどね」 リーネの容赦ない言葉に、理緒は顔を青ざめる。 どうやら自分は死んだらしい。しかもオーガと言う恐るべき人狼に殺されたのだ。 しかし、奇跡的に霊魂が残り、リーネについて行った事によって、あの世行きは免れているようだ。…今のところは。   「…俺は、どうすればいいんだ?」 理緒の問いに、リーネは、微笑を口元に浮かべながら、応えた。 「貴方の得る力を、私達に貸して。貴方を殺した人狼を倒せば、貴方は生き返る事が出来る」 リーネは、理緒に右手を差し出した。 「私、リーネ・トワイライト」 「俺は、久山理緒だ」 理緒は差し出された右手を握り、名を告げた。 新たな頁が、年代記に刻まれた。
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