ぼくのたろう

3/9
31人が本棚に入れています
本棚に追加
/35ページ
 ぼくは動物がきらいなわけじゃない。ひよこさんもひつじさんもすきだし、触ることだってできる。 「お散歩、行こう」  でも、犬だけはだめなんだ。 「行くー」  弟の元気なお返事のあとにぼそぼそと言う。 「ぼくはお留守番してる」  ママの手にはたろうのリードが握られている。 「今日はぽかぽかあったかいから、お散歩したら気持ちいいよ」  ママが玄関に行くより先に、弟が靴をはく。 「ママ、たろうのリードちょうだい」  弟はママの手にあるリードを呼んだ。 「はいはい」  ママは張り切る小さな手に、その手首より少し細いリードを渡した。弟は顔をニコニコにさせて、庭へと駆けていった。 「行こう、」  ママがぼくに左手を伸ばした。お留守番はだめだと言ってる気がした。リビングにいたぼくは、しぶしぶ玄関に向かった。
/35ページ

最初のコメントを投稿しよう!