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一巡目。歪みがあまり生じていない『私』は、なるべく軽めのものをと考えていた。苦難の末に考えついたのは、体育の授業の時に制服を盗むことだった。
男子の誰かが盗んだことにすればいい、と思った。実際、制服がなくなった時点で、話の展開は勝手にそっちに向かってくれた。
これで自分の順番は過ぎたと安堵したが、仲間はありがちな虐めにあまり良い顔をしていないことに、『私』は気付いていた。次に順番が回ってくるのが怖くなった。
『私』が虐めの方法について考え抜かなければならなかったのとは対照的に、そのかはあっさりと一巡目を切り抜けた。
あまりにも単純だが、精神的に痛めつけるには最適な虐めだった。
朋巳の持つケイタイ電話への無言電話と棘だらけの言葉が書かれたメールの送信だ。
日に三十回を越える声無き虐めは、かなり朋巳を痛めつけた。
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