侵食する現実

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 白浜そのかは、最近『私』たち虐めの輪に加わったばかりだった。  それもそのはず。現在のターゲットに変わるまで『私』たちが虐めていたのは、他でもない、そのかだったのだ。  そのかには、親友ともいうべき友達がいた。すでに過去形で表現しなければならない。  彼女の元親友の名は、弓咲朋巳(ゆみさきともみ)。現在のターゲットでもある。  仲のいい二人が決別した切っ掛けは、やはり虐めだった。  快活で物応じしないそのかは、『私』たちにとっては格好の獲物でしかなかった。  生意気だという、ただそれだけの理由で。  そのかと朋巳は、『私』たちには見飽きた友情ごっこを披露してくれた。  そして、その見せ掛けだけに過ぎない脆い友情は、『私』たちの虐めによって、床に落ちたガラス細工の如くあっさりと砕け散った。  そのかを庇っていた朋巳が差し伸べた手を払ったのは、他でもないそのかだったのだ。
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