侵食する現実

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 執拗な無視と見てみぬ振りの周囲。情報操作による朋巳発信を偽ったそのかの悪口。トドメは朋巳と『私』たちが普通に話をしている場面でも見せれば完璧だった。  ――私を庇う振りをして、内心では見下しているくせに。  朋巳が手を差し伸べるたびに、そのかはそう思ったはずだ。  ともかく、頭の良いそのかはある条件と引き換えに『私』たちに寝返った。  その条件こそ、決別そのものだった。  ――わたしを虐めないで欲しい。虐めるなら、朋巳にしよう。わたしは朋巳のことならいろいろ知っている。十分楽しめるはずだ、と。  そのかは、朋巳を売った。  『私』を除いた仲間が嬉々としてその提案を受け入れた横で、『私』は立ち眩みにも似た激しい目眩を感じていた。それは気を失いかけるほどの衝撃だった。  このゲームがもたらす歪みは『私』たちだけに留まらず、相手にも侵食することを知ったからだ。  苦痛がより強まった。いつか『私』も侵食されると思った。  その日から、虐め仲間が五人に増えた。
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