記憶の断片

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  「それで、そのツグミって子も一緒に行くんや」 『おぅ』 「ふ~ん」 『ほら、そうと決まれば寝る寝る!!お前の為に病院行くんやからな』 「私のため?」 『あぁ』 「うそつき、ツグミって子の為のくせに」 『は?何怒っとん?ツグミちゃんの足の為でもあるけど、お前の風邪も診てもらいに行くんやからな。はよ布団の中入れ』 アサミは怒ったまま、布団に入った。 俺はタオルを濡らす為、台所に行った。 そこから、アサミに言った。 『おぃ、アサミ?』 「なに?」 少し怒った口調でアサミが答える。 『何怒っとぅねん?てか飯、食ったん?』 「……うん」 『ナオヤ、なんかしてくれた?』 「ぅん…お粥作ってくれた」 『お粥?あいつお粥なんか作れるん?』 俺は冷水で冷やしたタオルを持ち、部屋に戻ってきた。 『あ!!もしかして、これ?』 「…うん」 俺は土鍋の蓋を開け、一口食べた。 『う…っっ』 「え!?どしたん?」 俺のうめき声に、アサミは起き上がり、俺を見た。 『うまぁぁぁあい!!』 「は?」 『なんやこれ!!お粥の域こえてるやん!!』 俺はお粥のぉいしさに興奮していた。 そんな俺に飽きれ、アサミはまた布団に入った。 『ナオヤ、俺にはこんなうまぃもん作ったことないで。てか、あいつ料理できたんか?俺ん家で作った時なんて、鍋こがしとったで』 「お粥しかできんって…結恵が言うてた」 『へぇ~。アサミにはこんなうまいの作って、俺にはまるこげ料理かょ!!なぁ?』 と、俺は冗談で言って笑った。 すると 「…うん」 と、アサミは小さく頷いた。 その声は暗かった。    
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