親友

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屋上のドアを開けると、寝転がって空を眺めている男がいた。 ナオヤだった。 「三神君?私、教室に戻るわ!後は二人で、ね?」 『え?あぁ』 結恵は階段を降り出した。 『あ!橘!!』 「え?」 結恵は振り返った。 『ありがとな』 「うん」 結恵はニコッと笑うと、また階段を降り出し、教室に帰って行った。 俺はその姿を見送ると、ナオヤのもとへ歩き出した。 『ナオヤ』 「…」 ナオヤは俺の声に反応しようとせず、空を眺めている。 俺はナオヤの隣に座った。 「…」 『寒いなぁ』 「…」 少し沈黙が続いた。 『…お前、俺ん家の時計いじった?』 「…」 『10分も遅くなっとったし!そのせいで、今日遅刻しそうなって、全力疾走するはめなった。携帯の時計見んかったら、マジ遅刻ってた』 「え!?なんで…俺…」 ナオヤは起き上がり、驚いたように俺をみた。 『やっぱ、お前時計いじったんや』 「…」 『嘘や。時計の時間、早くセットされてた。俺を遅刻させんようにしたんやろ?そのおかげで、遅刻せんですんだ。全力疾走はしたけど笑。ナオヤ、ありがとな』 俺はナオヤの方を向き、ニッと笑った。 ナオヤはまた寝転がり、 「遅刻せんかっても、授業出んかったら結局一緒やんけ」 と言った。 『それ言うのなしやろ』 と、俺は笑った。 するとナオヤも 「アホやなぁ」 と、言い笑った。 しばらく笑いあった後、また沈黙になり、静かに時が進んだ。  
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