記憶

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俺はその女を目で追った。 女は手際がよく、何事もこなしていた。 しかし、何もないところでつまずいてみたり、物にぶつかったりと、かなりのドジな奴だと俺は思った。 その様子を眺めていると、厨房のドンがスペシャルを持って出て来た。 「はい、出来たよ。今日はサービスで卵つきや」 「「おぉ!!姉さんやるぅ!」」 ナオヤとヤスは声をそろえて叫んだ。 その様子に姉さんは満足そうに微笑んだ。 『なぁ、姉さん。あの子新人?』 「は?誰ね?」 『あの今洗いもんしとる子』 俺が言うと姉さんは厨房の方を向いた。 そして言った。 「あぁ~ツグミちゃんねぇ。最近入った子ょ。手際よくてね、助かってるんょ。可愛くて性格もよくてね~いい子ょ。」 『ふぅん』 「なになに、どの子?そんな可愛い子おったん?」 と、ヤスが身を乗り出し厨房を覗いた。 「あっ!!おった!けっこぉ可愛いやん」 「こら、ヤス!!手出すんじゃないよ!ツグミちゃんに、もし手なんか出したら、私が黙っちゃいなぃからね!!!」 「怖っ!!姉さん怒らといてぇな!そんなんせんって!俺にはちゃんと好きな子おんねんから」 「あら、そうかいね。あんたもちゃんと恋しよんやね」 そう言い、大きな笑い声をあげながら姉さんは厨房に戻っていった。 その後ろ姿にヤスは叫んで言った。 「それ言い過ぎゃでぇ、姉さぁん!!」 その様子を見ていた俺とナオヤは笑った。 「お前らも笑うなよ!!」 俺達の方を向き、ヤスは怒った。 「はぃはい、落ち着けヤス。飯が冷める。はよ食べようゃ」 と、ナオヤがヤスを宥めながら席に誘導した。 俺達は席に着き、スペシャルをほうばった。  
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