想い

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  「…タケ…助けて…」 アサミの目から涙がこぼれていた。 アサミは恐怖で出ない声を必死にふりしぼり、猛に助けを求めていた。 「…」 ナオヤはアサミの手を離し、起き上がった。 そしてアサミに背をむけ 「ごめん」 と、一言謝り台所にむかった。 アサミはしばらくその場から動けず、布団の中で震えていた。 「…」 「…」 静かに時間が過ぎ、気まずい雰囲気が流れていたが、ナオヤが台所からアサミに声をかけた。 「アサミちゃん。俺これ作り終わったら帰るわ」 「…う…ん」 アサミの声は震えていた。 ナオヤは慣れた手つきで料理を進め、アサミの為にご飯を用意した。 「出来たで」 「…」 反応がない。 アサミは布団を頭から被って、背をむけており、様子がわからない。 しかし、ナオヤが近づくと震えがひどくなったのを、ナオヤは気付いた。 「ここに置いとくから、冷めんうちに食べな」 ナオヤはそう言うと、帰り支度をし、玄関へむかった。 ドアノブを握った時、アサミに言った。 「今日はごめん。怖い思いさせてもて…。今さらやけど、俺はアサミちゃんの事が好きや」 「…」 アサミは黙ったままだった。 ナオヤは一呼吸し、 「けど…。もぉこんな事せぇへんから。てか、もぉアサミちゃんに関わらんようにするから…ゃから…心配せんといて…」 と、言った。 アサミは何の反応も見せなかった。 ナオヤは続けて言った。 「…その飯…、その飯は元気が出るように作った、アサミちゃんの為のスペシャル粥やから残さず食べや、な?」 と、ナオヤは優しい声でアサミに言った。 しかし、アサミは何も答えなかった。 ナオヤはドアを開け、外に出ようとした。 その時… 「ナオ君!!!」 ナオヤは後ろを振り返った。 すると、涙を流し、震えながら、起き上がりこちらを見るアサミがいた。  
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