記憶の断片

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  俺は言われるがまま部屋まで進んだ。 ツグミの住むマンションは、外観からも豪華な感じがしたが、部屋に入るとしみじみと感じる。 (高そうやなぁ) 部屋も多いし、広い。 確実、俺には住めそうもない物件である。 『お前って金持ち?』 「そんなことないし。そこらへん適当に座っといて」 そう言うと、ツグミは部屋を出ていった。 (ぜってぇありえん。金持ちじゃないはずないやんけぇ~) そう心の中で叫びながら、俺は部屋を見回した。 周りを見ると家具は高価な物ばかりで、小物は綺麗に整理されていた。 まるで豪華なホテルに来たみたいだった。 周りを見ていると、ふと棚の上に飾られている写真に気づいた。 そこには、ツグミの小さい頃の写真や、家族で撮った写真があった。 その写真はみな高そうな写真たてに入れられていた。 しかし、それらの写真の後ろの方に、写真たてにも入れられず古びた写真が反対向きに置かれていた。 『なんやこれ?』 俺は気になり、その写真を手にとった。 そこには幼い二人の女の子が写っていた。 二人とも笑顔で楽しそうだった。 『一人はツグミちゃんよな…。もう一人は姉ちゃんか?お揃いの服やしなぁ。けど…この子どこかで…』 「何してんの?」 ツグミが部屋に入ってきた。 『え…ああ写真を見とった。これ…お前の姉ちゃん?』 俺が写真を差し出すと、ツグミは慌てて、その写真を奪いとった。  
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