記憶の断片

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  「…うん…」 ツグミは俯きながら応えた。 『あ…そうなんや。勝手に触ってごめん』 「…いいです。お茶入れてきたんで、飲んだら帰ってください」 ツグミはこちらを見ようとせず、冷たく言った。 『ああ』 俺はこう応えるしか出来なかった。 「…」 『…』 写真を差し出してから、前にもまして気まずい雰囲気になり、話し出すタイミングがなかった。 ツグミは救急箱を棚から取り出し、ひねった足の手当てをしだした。 湿布を貼り、包帯をまく。 ツグミは包帯を巻くのに手間取っていた。 巻くだけだが、とにかく下手だ。 包帯の意味がわからないぐらいぐだぐたになっていた。 俺はみるに見兼ねて、手を出した 『貸してみ。俺がやったる』 「え?けっこぅ…」 俺は断ろうとするツグミの言葉を無視し、半ば無理矢理にツグミから包帯をとり、巻いていった。 「…」 『…はい。出来た』 「…ありがとう」 『いいえ。どういたしまして』 ツグミは足首を触りながら、俺が巻いた包帯の出来を見ていた。 そして、ポツリと… 「…上手いね」 と、呟いた。 『え?あぁ。まぁ普通やけど。俺の幼なじみの親がさ、病院経営してて遊びに行ったら、やたら新人の練習台にさせられたり、なぜか俺まで一緒に練習させられたりしたからできるようになってたわ、ハハハ』 「…」 『…え?引いた??病院に遊びに行くとかキモぃな、俺💦うわぁ~まぢやってもた…ブツブツ…』 「え?ううん、そんなことないけど…。その病院ってこの近くにあるん?」 『え?あ~…ん~?車で1時間弱ぐらいの所やな。まぁ、ちょい遠いか』 「そうなんや」 『あ!明日病院行こ!!足見てもらぉや!ひねっただけやと思うけど、なんかなってたあかんし!』 「え!!いや、大丈夫やし!明日には治ってるって!しかも、明日も仕事やし」 『いや、行く。俺のせいやしな。姉さんには俺から言うとく』 「いいよ、そんなの。逆に迷惑やし、ほっといて下さい」 ツグミは冷たく言った。 そんなツグミに俺は必死に言った。 『頼む。じゃないと、俺の気がすまんねん』 「…」 『頼む』 「…ぇ…ゃん…」 『ん?』 「…なんで?なんでそこまで私に関わろうとするん?今日初めて会ったのに。確かに足ケガしたのは、あなたのせい。けど、私がいいって言ってるんやからほっとけばいいやん!」      
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