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オレ達は近くの公園のベンチに座り、少しの間話しをする事にした。
高司はオレとの間隔を少し多めにとって座った。
…………
しばらくの間沈黙が流れる。高司は何か話しをしたいようだが、タイミングが掴めない様子だ。しょうがなくオレが話しのきっかけを作る。
『高司さん、オレに用があるんだよね?わざわざ引き止めるくらいだから。』
高司はコクリと頷き、口を開いた。
『優子の事なんだけど…優子、顔の傷については痕が残ったりはしないってお医者さんが言ってた。でも……』
『でも?』
『精神面に強いダメージを受けてるみたいなの。それをどうにかしない限り退院は出来ないって。』
その言葉を聞いてオレの体はずんと重たくなった。オレのせいでこんな事になってしまったのに何もしてやることが出来ない。
オレは何も言えず、ただ重たくなった自分の重力に堪えることがやっとだった。
『裕司君、そこでお願いがあるの。』
『お願い?』
『そう、裕司君に優子を助けてほしいの。こうなってしまった原因を優子に聞いても何も教えてくれないし…。
残念だけど私じゃ優子の役に立ってあげれない。
学校には体壊して自宅で休んでるって事になっているから、学校の友達にはこの事は相談できないし………
裕司君は理由を知ってるんでしょ!?だったら優子を助けれる事が出来るのは裕司君しかいないの!
お願い!優子を助けて!!』
そう言って高司はオレの肩を強く掴んできた。爪がオレの体に食い込む。高司の声は小さく震えていて、目には今にも溢れそうなくらい涙が溜まっていた。
彼女は友人が苦しんでいるのに力になれず、それを誰にも相談できず、たった一人でこの悩み抱えていた。
オレには仲間がいる…しかし彼女は一人だったのだ。
なんとか力になりたい。オレの大切な恋人の事をこんなにも想ってくれている彼女を救ってあげたい。
でも………
『ごめん…オレには出来ない。』
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