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『……え?』
高司は予想もしていなかったオレの言葉に戸惑いを隠せない様子である。
オレは話しを続けた。
『高司さんが優子の事をそこまで想ってくれているのは嬉しいし、有り難く思ってる。
オレは優子を助けたいと思っているし、高司さんの力にもなりたいと思ってる。
……でも駄目なんだ。いくらオレがそう思っていても、見えない相手に畏縮して体が動かなくなるんだ。
体だけじゃない…ほんのちょっとだけだけど、いないとわかって安心した自分もいたんだ。
こんなんじゃ、絶対に倒すなんて無理なんだよ。オレはやる前から負けてしまっているんだ……オレでは優子を救えないし、高司さんの力にもなれないんだ。』
『……本当にそう思ってるの?』
オレは何も言えず、ただコクリと頷いた。
………
再び沈黙が流れる。高司には悪いと思ったがこうする以外の方法はオレには思いつかない。
『わかった……それじゃ私、帰るね。』
『……うん。』
高司は下を向いたまま立ち上がり、呆れたように肩を落として歩いて行った。
こうするしかなかったんだ。そう自分に言い聞かせる。必死で自分をかばいながら遠くなっていく足音を聞いていた。
足音が消えてからもオレはしばらくベンチに座っていた。今は誰もいないこの場所にいるのが1番気持ちが楽だった。
1~2分座っていると再び遠くから足音が聞こえた。歩調が速い…おそらくランニングの人か何かだろう。だんだんこちらに近づいて来ている。
タッタッタッ……
……!!!
近づいてきたのはなんとたった今別れたばかりの高司だった。しかし先程と違って高司は顔を真っ赤で、息を荒くしてオレの前に立っている。
そしてオレを睨み付け、右手を思い切り振りかぶった。
ヤ…バ……
バッチィィイイイイン!!
『アンタがそんなんでどうすんのよ!!このチキン野郎!!!』
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