第七章

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オレの左耳からはキィーンという金属音のようなものが響いている。左頬も熱く、痛い……   しかし高司の高ぶった感情はおさまる事を知らない。我慢して溜めていた大粒の涙がポロポロと頬を流れる。   『見えない相手に畏縮!?何言ってんの!?私は情況がわからないって言ってるでしょ!意味のわかんない事をボソボソとつぶやいて……つぶやきシローかっての!! アンタってそんなものなの!?アンタの優子に対する気持ちはその程度なの!?   アンタは優子のたった一人の恋人でしょ?   優子は寝ている時、よく寝言で裕司君の名前を呼んでたわ。 あの時に病院で裕司君にあんな態度を取られても、自分を受け入れてくれなくても、まだ裕司君を信じ続けているんだよ? 優子はねぇ…裕司君にしかない゙何か"を知ってるんだよ。だからその゙何か"をずっと信じているんだよ。あれから一度も顔を見せてない裕司君を信じ続けているんだよ。   そんな人に対して裕司君は背を向けるの?自分の小ささを知ってしまったから逃げるの?そんなんだったら優子の恋人なんか辞めてしまえバカヤロー!!』   そして高司は泣き崩れるようにその場にしゃがみ込んだ。   オレしかない゙何か"…優子はそれをずっと信じて待っていてくれているのか。 だが、オレにしかない゙何か"とは一体何なのだ?   オレはそれが何なのかを一生懸命自分の中で考える。     ………ザッ、ザッ     グルルルルルル……     高司の後方で犬の鳴き声のような音がした。しかしこの滲み出るような殺気は何だ?それに、足音が大きすぎる……     ……!?もしかして!!     『キメラか!?』   オレはかばうように高司をオレの背中へ引き寄せた。   『え?何?』   『後で話す。今はオレの後ろから離れないで…』   グォオオオウ!!  
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