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…いない。確かに後から声がしたのにそこには誰もいない。しかし、気配は今も感じる。その方向はやはり後方である。オレは優子をかばうように身構え、周囲を警戒した。
『ほう、オレの存在がわかるのか?やはり…お前はなかなか筋が良い。しかし、゙術(すべ)"を知るにはまだまだ刺激が足りないみたいだな。』
何者かの声がした。おそらく、男の…。それはさっきよりだいぶん近くに感じた。オレは見えない相手に向かって叫んだ。
『隠れてないで出てこい!!どこにいるんだ!目的は何なんだ?!』
見えない相手はフンと鼻を鳴らし、答えた。
『今のお前にそれを話す必要はないな。それより、今からお前に絶対的な力を与えてやる。まぁ、少し痛いが我慢してくれ。…特にハートがな。』
『力?何の事をいっ……がはっ!!』
オレは言葉を言い切る前にいきなり後方へ吹き飛ばされた。鼻の奥が熱くなり、鉄臭い味がした。おそらく顔面を殴られたのだろう…誰もいないはずの正面から。
『きゃあああ!!』
優子の悲鳴が聞こえた。オレはふらつきながらも必死に立ち上がった。すると目の前には見たことのない男から首を掴まれて身動きの取れない優子の姿があった。オレを殴ったのもたぶん、あいつだ。どう見ても危険な状況である。オレは男に向かって叫んだ。
『貴様…!!優子を離せ!』
男は楽しそうに笑いながら言った。
『まぁ待て。刺激を入れるのはこれからだ。よく見ておけよ。最高の刺激だぞぉ。ははは!!』
ガス…!!
男は優子の髪を掴み、顔を思いきり殴った。優子は短い悲鳴をあげる。
『おい!何やってるんだ!?やめろ…やめろ…』
ガス!!ガス!!ガス!!
何度も殴り続ける男。次第に優子の悲鳴は消え、顔はもはや人間ともいえないくらいに変形している。
『やめろ…やめてくれ…やめてくれ…』
小刻みに震える優子はオレを見て力無く呟いた。
『…ゆう…じ…くん……』
しかし、男の攻撃は止まらない。
『そらそら…まだイクぞぉ~。』
ガス!!
………ブツン。
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