第八章

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        眠れない………         佐々木達と別れ、家に帰ったオレは最後の戦いに備えて早めに就寝する事にしたのだが、なかなか寝付くことができずにベッドの上で何度も寝返りを続けていた。 普段より1時間ほど早くベッドに入ったのも原因であるが、それだけではない。     明日の戦いに対する不安、期待、恐怖…様々な感情が頭の中をぐるぐると回り続け、オレの睡眠を妨害していたのだ。   『これは、しばらく寝れそうにないな……』   体を起こして時計を確認すると時刻は23時を過ぎていた。 何か特別な事がない限り両親は22時には寝室に移動している。オレは眠くなるまでリビングでテレビでも見ていようと考え、階段を下りた。     リビングに行くとすでに電気はついていなかった。両親は寝ているみたいだ。オレはソファに座ってテレビの電源を入れた。   テレビのチャンネルを回してみたが、ほとんどがニュースとお笑い番組だった。今はそんな気分ではないのだが……     『……そういえばこの前借りていたDVD、まだ返してなかっけ。』     事件の前にオレはレンタルショップでDVDを一本借りていた。新作ではないのだが一週間はとっくに過ぎてしまっている。 このまま見ずに延滞料金だけ払うのも気分が悪い…たいした番組もやってないので取り敢えずそのDVDを見ることにした。   ………     内容はこうである。   主人公である中年の男が高校生の娘に暴行を加えた男子学生に怒りを覚え、一ヶ月の訓練の後、男子学生に敵討ちをするために男子学生の学校へ出発した。       『この人、オレにそっくりだなぁ…』   オレはこのDVDの主人公が今の自分を写し出しているようで妙に親近感がわいた。主人公が訓練を重ねるたびにどんどん実力と自信をつけていくのが自分の事みたいに感じる…時折みせる不安や恐怖も。   この人は不安や恐怖を克服したんだな…   オレはそれを最後まで見ずに、主人公が決闘の日に男子学生の学校へ向かうところでDVDプレーヤーのスイッチを切って二階に上がった。       この映画の続きは、オレがつくろう。
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