第九章

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 黒木町まではここから車で国道444号線にのって30分ほど走らせた所にある。オレは黒木町には行った事はないが2人の話によると、緑とダムが美しい町らしい。   幸一が運転をしている隣で佐々木は携帯電話ごしにずっと会話をしている。おそらく仲間部隊と連絡をとっているのだろう。   しばらくすると佐々木は会話を止めて携帯電話を閉じて言った。   『現在、偵察班は敵拠点に到着し2ヶ所から警戒を続けている。敵に大きな動きはなく、正面入口の警戒員が2時間交代で監視を続けているらしい。 ちなみにオレ達と一緒に行動する2個班の直接戦闘小隊はあと15分程で偵察班と合流するとの事。 今の状況についての質問は?』   オレと幸一は無言で首を横に振った。佐々木はニヤリと笑い前を向くと、短く叫び気合いを入れた。   車内の空気はすでに戦闘体制に入っていたが、オレはそれを不快に感じる事はなく、恐怖感もいだかなかった。   オレの中にある固い決意が、恐怖や不安という負の感情を飲み込み、消し去ってくれている気がする。       ………今なら誰にも負ける気がしない。       あと10分程で到着すると、幸一は言った。
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