第九章

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『ぐ…あ…何故?何故このような事が…?』   先に地に膝をついたのは坂江の方だった。 坂江が手を突き出して無防備状態の佐々木に対して攻撃をする寸前のところで、キメラの死骸が坂江の体に物凄い速度で衝突したのだ。   佐々木は今も手を伸ばしたままである。という事はおそらく、゙術(すべ)"を使って攻撃をしたのだろう。しかしどうやって?   当然、佐々木の゙術(すべ)"が効かないと思い込んでいた坂江は、予想外の事態とダメージに動揺を隠せないでいた。   佐々木はそんな坂江を見て、手を腰に当てて勝ち誇った様子で言った。   『だけん言ったやろうが!!オレに負けはねぇ…確かにお前にはオレの゙術(すべ)"は通用しねぇ。 しかし、それはあくまで゙お前"には通用しないっちゅうだけや。そこがお前の盲点やったわけやな。』   しかし坂江は佐々木の言っている意味が理解できずに、たった今起こった現実を受け止められないでいた。   『…だが、オレの゙術(すべ)"は万有引力無視…こんな事が起きるわけがない…起きるわけがないんだ…』   佐々木はそんな坂江を見て大きなため息をつく。   『はぁ…お前も応用力がねぇな。じゃあカラクリを教えてやるよ。 答えは簡単や、オレの゙術(すべ)"の対象となった二つの物体間を直線で繋いだ線上にお前がいたとしたらどうなる?』   佐々木のその言葉に坂江は、はっと気付いて顔色を悪くした。佐々木はお構いなしにさらに話しを続ける。   『もうわかったよな?オレはお前を対象に選んでなんかない、たまたま壁に向かって引き寄せられるキメラにお前が当たっただけって事やな。 …残念やったな。もう少しで倒せるところやったのにな。この勝負、もはや…』       『オレの勝ちや!』   佐々木はもう一度、勢いよくキメラを坂江にぶつけた。防御をする気力すら失って放心状態になってしまっていた坂江は、その一撃で糸を切られた人形みたいに力無く顔を地にうずめた。   『オレは佐々木2等陸尉!!自分の弱点に対する対処法くらいバッチリ研究済みや…次に目を覚ます時は捕虜収容所か自衛隊病院のベッドやな。 まぁ、それまでせいぜい良い夢みろよ♪』
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