第九章

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        グオオオオゥ…       ……ドサ   『……ふう、これで全部か。』   ようやくキメラの大群を片付けたオレは壁を叩いて佐々木の様子を確認した。   『佐々木さん!!佐々木さん!!無事だったら返事をして!』     ………     『無事じゃねぇが…こっちの敵残存勢力はゼロや。お前の方こそ大丈夫か?』   『こっちもなんとかね。隊員の皆さんもこれといって大きなダメージは受けてないし、次に進めそうだよ。』   オレはホッと胸を撫で下ろした。どうやら佐々木は無事のようだ。 早速オレは佐々木と合流しようと壁を調べてみたが、どこにも通路となるようなものは見当たらない…佐々木側にも調べてもらったが結果は同じだった。   佐々木はしばらく黙り込んでいたが、すぐに壁を叩いてオレに指示を出した。   『裕司、オレの方は扉がない。今から破壊班を無線で呼ぶが、そうなるとかなりの時間がかかる。お前は今いる隊員と先に行って敵の頭を叩け!!』   つまり単独で動くということか…だがそれはあまりにも危険すぎる。戦闘経験の少ないオレは、佐々木のこの無理矢理とも思える指示に首を縦に振ることはできない。   『たしかに昨日ここの地図を見せてもらってだいたいの通路はわかるけど…オレだけなんて無理だよ、隊員さん達も危険な目に遭わせてしまうかもしれないし。 オレもここで佐々木さんと破壊班が来るのを待つよ。』   『オレは無理な任務は与えねぇ。今回オレ達がとった攻撃手段は奇襲…今いるところが相手の陣地だけに時間がかかるにつれて非常に不利な状況になる。 だけん今の命令は任務遂行の上で最善。大丈夫、オレもすぐにお前に追い付く…行ってこい!! それに…』   『…それに?』   『恋人の仇をとるのにオレの助けはいらねぇよな? …行け!!お前の力であいつを握り潰してこい!!』   佐々木は壁を思い切り殴ってオレに一喝をいれた。壁ごしにもかかわらず佐々木のそれはオレの体にビリビリと衝撃を与えた。   そうだ、優子の仇…あいつ(菅藤)はすぐそこにいるのだ。オレはこのためにほとんどの時間を注ぎ込んできた。もはやどんな障害もオレには関係ないのだ。   『わかった…行ってくるよ。』   『度肝ぬいてやれよ』   『佐々木さん』   『なんだ?』   『オレ、変われるかな?』   『アホ、結果を出してから言え。』   オレはクスリと笑って先へ進んだ。
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