第九章

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 オレは先へとつながる扉を開け、数名の隊員とともに前に進んだ。 昨日の地図によれば、菅藤の部屋は目の前の廊下を進んだ先にあるはずだ。   すぐさま隊員の一人がオレの前に出て5メートル程先を先行した。なんでも、不時の事態に対処するための前方警戒員だそうだ。 前方警戒員によって防御体勢をかためたオレ達は、少しずつ廊下を進んで行った。   廊下の長さは50~60メートル程であったが、オレにはそれが物凄く長く感じた。 次に待ち受ける事態に対する不安、恐怖…ありとあらゆる゙負"の感情が枷となってオレの足を重たくし、胸の鼓動を早く動かす。   オレはそれを引きずりながら、少しずつ、足を前にはこぶ。     ……ガコン     廊下の中央にさしかかった所で前後から妙な音がした。 それに即座に反応した前方警戒員は立ち止まって全周を警戒する。       『う…うわぁあああ!』       突然キメラが前方警戒員の頭上に落下し、勢いよく上にのしかかった。それを合図にするかのように、キメラは次々と降ってきてオレ達はあっという間にキメラの大群に包囲されてしまった。   『くそ!!今はこんな奴らに構っている時間はないのに…』   前に行こうにも廊下は狭く、キメラを避けて通る事は不可能、もちろん後方も同じ状況である。やむを得ずオレは手刀をつくり、戦闘体勢に入った。 しかし一人の隊員がオレの前に出て来て、腰にさしている刀をキメラの大群に向けて抜いた。   『キメラは特殊作戦軍のオレ達で対応できる。オレ達がキメラの相手をしてる間に君は次に進むんだ。』   隊員はそう言っているものの、相手はキメラで数も向こうが圧倒的に多い…どう考えても勝てる見込みはない。 しかし隊員の顔に恐怖心は見られなかった。   『この先にいるのは能力者…オレ達が行ったところで何の役にも立てない。ここはオレ達に任せて君は先に進むんだ!!』   『でもこれだけの数、無事で終る訳が…』   『心配はいらない、オレ達は佐々木2尉の部下…死んでも死に切れん奴らばっかりだよ。』   隊員はそう言うとニコリと笑ってウィンクをした。 …佐々木の言う通り各人それぞれに与えられた任務があり、それがどんなに危険なものであれ、遂行の為ならば命をも惜しまない。 オレはこの人達の意志を無駄にはできない。   (進学やめて自衛隊入ろうかな?)   オレは自分の頬を思い切り叩いて前の扉に向けて走った。
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