第九章

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 オレは前方に見える扉まで走った。しかし何体ものキメラがオレの行く手をはばむ。   『どけぇー!!』   今はキメラに構っている暇はない。オレはキメラに致命傷は与えず、ただ起動力を失わせる程度の攻撃に留め、前に進む事に専念した。   扉まであと10メートル…       5メートル       1メートル…!!       バン!!   『菅藤ぉおお!!』   オレは目の前にある扉を思い切り蹴り開けて叫んだ。   そこには探すまでもなく、゙アイツ"が部屋の中心に立っていた。 基地が奇襲を受けたにもかかわらず、それは、自信に満ちた余裕の表情をオレに見せながらニヤニヤと笑っている。   菅藤が口を開いた。   『お前はあの時の餓鬼だな…ここに何の用があるんだ?もう夕方の6時だ、子供は帰る時間だぞ。』   どこまでもスカした野郎が…今は怒りを隠す必要なんてない、オレは拳を痛いくらい握り締めながら菅藤に言った。   『お前は優子の仇!!オレはあの日から、この瞬間の為に毎日を生きてきた。 お前がこの施設で何を企んでいるとかはオレには関係ない!! オレの目的はただひとつ…お前をこの手で握り潰す事だ!!』   オレの言葉を聞いた菅藤は呆気にとられて口をポカンと開けていたが、やがで体を大きく反らしながら馬鹿にするように大袈裟に笑った。   『ははははは!!…それだけの理由でここに来たのか?馬鹿な餓鬼だ。大人しくしていれば死なずに済んだものを…まぁ、どちらにしろ、もう能力者を集める必要も無いのだ。お前もいずれ始末する予定だったから調度いい。 いいだろう、゙術(すべ)"を知って一月も経たない素人がオレをどうこう出来るとは思えないが… せいぜい悪あがきするんだな!!』   菅藤は勢いよく地面を踏み締め、構えをとって鬼の形相でオレを睨みつけた。 オレの体にビリビリと痛みを伴う程のプレッシャーが容赦なくぶつかり、膝を震わせ、本能がオレに逃げろと叫んでいるのを感じる。   …オレはこんな化け物を相手にしようとしているのか?     でも…     オレは静かに手刀をつくった。         『絶対に、倒す!!』
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