第九章

19/30
前へ
/150ページ
次へ
      …同時刻。病院           二人の少女が病院の屋上で夕刻の少し冷えた心地良い風を浴びていた。   『今日は佐々木さん来ないね、優子?』   『そうだね…』   『゙迎えに来る"って聞いて以来、裕司君にも会ってないし…どうなってんのかな?』   『あのね高司、その事なんだけど…』   優子は高司の顔を覗き込み、少し申し訳なさそうに話しをした。   『裕司君の話は佐々木さんから聞いていたの。 私を殴った相手に仕返しをする為に毎日体を鍛える訓練をしたり、戦いの勉強をしたり…毎日佐々木さんから裕司君がその日にした訓練の内容とかを教えてもらってたの。』   優子の話を聞いた高司だが、イマイチ納得が出来ていない様子である。   『え?でも佐々木さんと裕司君に何の接点があるの?よくわからないんだけど…』   『うん、実は…』       優子は高司に敵討ちの相手が、佐々木の部隊と対立する組織の指揮官である事を説明した。 それを聞いた高司は納得して手をポンと叩いたが、すぐに慌てた様子で優子の肩を掴んだ。   『なるほど、そういうことだったのか。だから佐々木さんは毎日夕方5時過ぎくらいにココに来てたのね…ってソレまずいじゃん!!自衛隊と対立する組織ってかなりヤバイ連中じゃないの!?裕司君は大丈夫なの!?』   優子は動揺している高司の腕をそっと掴んで、優しくニコリと笑った。   『裕司君なら大丈夫。根拠も無いし、本当にただなんとなくなんだけど、裕司君なら大丈夫な気がするんだ… それに私が何て言おうが、裕司君は必ず相手のところに行く。 だったら私の出来ることは、ただ一途に裕司君を信じる事だけだよ。』   高司は少し照れた感じで頭をポリポリとかきながら優子に背を向けた。   『あんたの話を聞くとコッチが恥ずかしくなってくるよ。 …女の敵討ちに自分の命をはって戦いを挑む…カッコイイじゃん!!バカだけど最高の彼氏だね。』   優子は嬉しそうに頷き、そして小さな声でポツリと呟いた。     (裕司くん、ありがとう…)   『え?何?優子、今何か言った?』   『ううん、何でもないよ。それより、だいぶ日が落ちてきたね…そろそろ戻ろっか?』   『そうだね、もう戻らないと看護婦さんに叱られるもんね。』     二人は軽い冗談話をしながら病室へと帰って行った。
/150ページ

最初のコメントを投稿しよう!

52人が本棚に入れています
本棚に追加