第九章

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身を震わせるほどのプレッシャーがオレに襲い掛かってきた。   …間違いない、菅藤ば術(すべ)"を使ってくる…オレは視線を菅藤だけに集中させ、重心を低く保ちながら防御の体制に転じた。         ……………      …?     …30秒は経ったが、何も起こらない。だからといって不用意には飛び込めない。オレはそのままの体制でもうしばらく菅藤の様子を伺うことにした。       菅藤が上げていた両腕をしたに下ろした。そしてオレの足元を指差してニヤリと笑って言った。   『ところで小僧、お前の足元は大丈夫か?』       …?何の事だ?菅藤の突拍子のないその言葉に、ついオレは足元を確認してしまった。   ……!!   オレは自分の目をうたがった。 それもそのはず…オレの足元には、底が目では確認できないくらい深い大きな穴が空いていて、しかもオレはその穴の中心に立っていたのだ。   『う、うわぁあああ!!』   オレはパニック状態になってしまい、その場でがむしゃらに手足をバタバタとばたつかせて必死にもがいた。     『ククク…何をそんなに慌てているんだ?』     ……ガス!!     『が…はっ!!』     あたふたして無防備状態のオレの腹部に菅藤は渾身の力で拳をねじ込ませた。   オレは強烈な痛みに耐えきれず、両膝を地に付ける。   菅藤はそんなオレを見てゲラゲラと笑った。そして、あたかも当たり前のように穴の上に立った。 …もしかして菅藤の゙術(すべ)"は重力無視なのだろうか?   菅藤は穴の上で跳びはねながら、馬鹿にするようにオレに言った。   『おいおい、穴なんて何処にあるというのだ?オレには全然わからないぞ。ハハハハ!!』       たしかに菅藤が跳びはねている位置には穴がある。なのに何故落ちないのだ?奥行きもあるので絵ではないはずである。   わからない…   今のオレはただ腹部を押さえて痛みに堪えるだけしか出来なかった。   菅藤はそんな絶対的に有利な状況を楽しむようにオレに向けて叫んだ。     『オレを握り潰すのだろう!?ならばまだまだ遊ばせてもらうぞ、立て小僧!!』
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