第九章

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 菅藤は両手をオレに向けて叫んだ。   『逃げ場を無くしてやろう!! …゙変換"!!』   菅藤がそう叫んだ瞬間、オレと菅藤を挟むように大きな深い穴が現れた。 菅藤は穴に挟まれて逃げ場を無くしたオレに容赦なく襲い掛かる。   行動範囲が極端に狭くなったせいで菅藤の攻撃を捌く事ができない…オレはとうとう穴のぎりぎりの所まで追い詰められた。     (……マズい!!!)     ………?     万事休すのところで、菅藤は何故か攻撃を中断させていったん距離をとった。 このタイミングであと一撃でも打撃を与えればオレを穴の底に落とせたはずなのに……     なにかタネがあるな……     オレは少しの時間、そのまま防御の体勢をとっていたが菅藤はまったく攻撃してくる様子はない。 この時間を利用して今までの菅藤の行動について考えた。       まず一つ…菅藤は任意の場所に穴を設置することができる。しかし、それがどういった原理でできているのかはわからない。   二つ、菅藤はその穴の上に立つ事ができる。   三つ、オレが端にいるときは攻撃を仕掛けてこないという事。     ………     試して、みるか………     オレは菅藤に気付かれない程度に後ろ脚を後方にずらしてある事を確認した。       ……やはり、そういう事だったか!!     『な、馬鹿な!?』   オレは菅藤との距離を詰め、斬撃を繰り出した。オレの予想外の行動に菅藤もあわてて後方へ下がる。   『まだまだぁあ!!』   オレは何度も何度も斬撃を出した。そして今度は菅藤が追い詰められた形になった。   『くっ!馬鹿が!とうとうヤケになったか…』   菅藤は少しバックステップをしてまた穴の上に立ち、回避行動をとる。     だが、今のオレにはもう通用しない!!     オレも一歩前進して穴の上に立ち、完全に安心しきっている菅藤の腹部に一撃をくわえた。 直線的に切れた菅藤の服が、じわりと紅色に染まる。     オレは初めて片膝を地に付けた菅藤を指差して叫んだ。     『このカラクリ、もはや見切ったぞ…菅藤!!』
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