第二章

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 しばらくは家に帰らないだろう。親にはこの状況を説明しずらいし、反対されるに決まっている。オレはこっそり支度をして、そのまま黙って出ていく事にした。   …ガチャ   オレは静かに玄関のドアを開けた。家に入ってすぐのリビングに目を向けた。 しめた…!!母はテーブルの椅子に腰掛けてウトウトしている。昨日はあまり寝てなかったのだろう。オレはゆっくりと自分の部屋である2階へ向かった。  自分の部屋に入ったオレは押し入れにしまっていたボストンバッグを取り出して、5日分の着替えと、ひそかに貯めていた貯金をそれに詰め込んだ。いざという時の事を考えて。   机の上にある優子とツーショットで写っている写真も持っていこうと思ったが、優子の顔を見ると自分がダメになりそうな気がしたので置いていくことにした。   もしかしてもう家には戻れないかもしれない。それどころか…。 オレはリビングで寝ている母に軽く頭を下げた。   (今までありがとう…行ってきます。)   そしてオレは家を出た。   佐々木が家の前に立っていた。腕を組んで足をコツコツと地面にぶつけている。結構時間がかかったから怒っているのかもしれない。   『待たせてごめん。もう準備は出来たから行こうよ。』   佐々木は家から出て来たオレの姿を見て不思議そうな表情を浮かべている。自分のシャツを確認したが反対でもないようだ。ズボンのチャックも閉じている。   『どうしたの?』   『オレはジャージか何かに着替えろって言いたかっただけなんやけどな…。勘違いしてるようだが…今日からお前がする事は家から通える範囲での行動だぞ。』
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