第二章

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『えぇえええ!?』   オレは狙ってもないのにマスオさんの様なリアクションをとってしまった。   恥ずかしい…。ついさっき母にした一礼、もしもの時のためを思い持って来た貯金、もしかして家に二度と帰れなくなるかもしれないというプレッシャー。 あのオレの感情は全てオレの勘違いからだと思うと、顔から火が出そうだった。   佐々木はため息をついて言う。   『何をしてるんだ?早く荷物を置いてジャージに着替えてこい。』   オレは恥ずかしさを紛らわすために、急いで荷物を置きに家に戻り、ジャージに着替えて来た。   するとすでに佐々木は車に乗車していて出発の準備が出来ていた。なんとも無駄がない…。   『行くぞ。車に乗れ。』   オレは佐々木の車の助手席に乗り込んだ。佐々木はオレが乗車してドアを閉めると同時に車を発進させた。かなり急いでいるのか、それともせっかちなのか。   『おい、裕司。お前は部活はしているのか?』   運転をしながら佐々木が質問をしてきた。オレは名前で呼ばれることが妙に照れ臭かった。   『いや、中学まではテニス部だったよ。ずっと後衛だった。』   『中学ねぇ…。じゃあ、一からやり直すか。』   佐々木はそう言うと前を見たままニヤリと笑った。   オレはその笑顔の意味を約20分後に知ることになるのだった。   車が止まった。オレは降りて辺りを確認した。   『公園…?』   『その通り。お前はここでしばらくの間、トレーニングをしてもらう。まずは全てのスポーツ、格闘技などの基本であるロードワークからや。』   いきなりの佐々木の言葉にオレは戸惑う。   『あの…オレは優子の仇を討ちに行くんじゃあ…』   『今のお前に足りないものば力"や。まだ゙術(すべ)"も知らないお前にはそれが1番重要になる。だから基礎を作り、戦える体にする。 敵は銃などの火器は持ってないからな。体を鍛えるだけでも少しは違う。』   佐々木の言葉には間違いがなかったので反論できなかった。 オレは佐々木が言うままに準備運動と柔軟をすませた。   『この公園の外周は約3キロメートルある。これから毎日、この外周を6周走ってもらう』   …オレの中の時間が止まった。
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