第二章

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 公園を散歩中の犬の鳴き声により、オレは失いかけた意識を取り戻した。 外周3キロメートルの公園を6周、単純計算で18キロメートルである。 『18キロメートルって…1キロ6分で走っても2時間近くかかっちゃうよ!!』 しかし、佐々木はいたって冷静な表情。 『じゃあ2時間で走ればいいやないか。』   佐々木はそう言ってオレの背中を押した。どうやら冗談で言っているわけではなさそうだ。   オレは仕方なく、外周を走ることにした。2時間の我慢だと、肩が落ちている自分に言い聞かせながら。         一時間後…   オレはバイオハザードのゾンビの様な姿勢になって走っていた。 現役を退いて3年間、まさかここまで体力が下がっているとは…。オレは3周目の始めの辺りで倒れこんでしまった。   そんなオレの近くで佐々木は芝の上で横になって携帯電話を扱っている。そして、佐々木はオレの顔を見ることなく言った。   『早く走れよ。走ってしまわないと次の訓練に移れないぞ。』   オレは佐々木に殺意を覚えたが、今はそんな力も残ってない。それよりもあとの距離に残りの体力をあてる事を考えた。   オレは起き上がり、産まれたての小鹿の様に震える足を押さえながら走り続けた。
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