第二章

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『まずは構えからだ。構えにば右構え"ど左構え"ど自然体"の三つがある。裕司、お前は何利きだ?』 『手は右だけど足は左だよ。多分、小さいときに矯正されたんだと思う。』   『そうか。だったらお前ば左構え"やな。 ゙左構え"は体の左側を相手に向けるように半身に立ち、右手首が自分の水月に触れるくらいの位置に置く。左手は軽く曲げ、拳の延長上に相手の喉がくるようにする。 足幅は肩幅よりやや広く。 腰を低くし、胸は張らない。最後に右足と左足、右拳と左拳が同一直線上に並ばないように微調整をする。これが基本の構えになる。』 佐々木は自分で構えて、その細部を詳しく、丁寧に説明した。オレもそれを真似てみる。 『もっと腰を低く。肩に力が入りすぎている。』   佐々木からの指導をうけ、オレはさらに構えを矯正した。オレと佐々木のこのやり取りは20分程続いた。   『よし、こんなもんかな。どんな感じだ?』   佐々木の最後の矯正が終わった時、オレの身体は今までにないくらいに安定していた。 足から地面に根がはったように強く感じる。オレは初めての感覚に嬉しくなった。   そして何度も構えては解き、構えては解きの動作を繰り返した。それだけで何だか急に強くなった気がした。   『いいぞ。今日ば左構え"を身体に染み込ませるんや。とにかく構えろ。今日はまだこれ以外は教えないからな。』 オレは何回も、何十回も構え続けた。
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