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『優子!!』
目が覚めるとオレは背中をぐっしょりと汗で濡らしていた。息も上がっている。
あの時の夢だ。もう二度と見たくなかっのに…。
『お前にあの時、力があればこんな事には…』
ホント…佐々木の言う通りだ。
オレはたった二日間で忘れかけていたのだ。今やっている激しい訓練は全てオレのためであるのに。
それをオレは…たった二日何もなかっただけで…平和だっただけで…。
急に自分が恥ずかしくなった。佐々木は自分の為に指導をしてくれているというのに、顧問に部活を無理やりやらされる部員のような気持ちになってしまっていた。
むしろ感謝をするべきであったのに…。
オレは佐々木に対し、申し訳ない気持ちでいっぱいになった。同時に自分の愚かさを恥じた。
オレは、オレの意志で訓練をしなくてはいけなかったのだ。なのに…。
『佐々木さん…ごめん。』
オレは佐々木に謝った。佐々木のいないこの部屋で。
『さて、今日も公園でしっかり訓練するか。』
気分を切り替えてオレは背伸びをしてベッドからおりた。ふと枕を見ると、四箇所にナイフで切ったような亀裂がある。
『だいぶ長く使っていたからなぁ。破れちゃったか…。そろそろ買い替えるかな?』
オレはその枕をごみ箱へ投げ入れて部屋を出た。
そしてオレはいつも通りに学校へ行く支度をして、家を出た。
力を手に入れる為の訓練をしに…。
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