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『遊びにって…いったいどこにいくの?佐々木さん。』
オレは楽しそうに体を左右に振りながら車を運転している佐々木に言った。佐々木は笑顔のまま答える。
『イナサ山に行ってるんや。あそこの眺めがいい。男二人で遊園地とかは逆にシラケるやろ?』
『いや、男二人で絶景スポットもどうかと……。』
今日の佐々木の様子はおかしい…。今まで一度も訓練を早めに切り上げるなんてしなかったのに。何かたくらんでいるのだろうか?
オレは緊急時に備えて心の準備をしていた。
しかしそんな心配も必要ないくらいに車はすんなりイナサ山に到着した。
佐々木は駐車場に車を停めるのとほぼ同時に下車して下の景色が見渡せる場所まで走って行った。…せめて鍵はかけるべきだと思うが。
『ほら裕司!!こっち来て見てみろよ。絶景だぞ!!』
テンションが上がった佐々木は回りの目を気にする事なく、オレにブンブンと手を振りながら大声で叫んだ。オレは恥ずかしくなって急いで佐々木のもとへ駆け寄った。
『ちょっと何てんの!?そんなに大声だしたらこっちが恥ずかしいよ…。』
『いいから見てみろよ。いい眺めだぞ。』
『え?』
佐々木に言われてふと景色を見ると、言葉を失った。これが今まで自分の住んでいた所なのかと疑問に思う程だった。具体的にどう凄いかは、実際に行って見てもらいたい(この小説の作者の国語力では表現できないというのも一つの理由である)。
佐々木はオレの焦る気を落ち着かせる為にわざわざ2時間もかけて、ここへ連れて来てくれたのだろうか…。オレは佐々木の意外な一面に驚き、そして感謝した。
オレ達はその景色を見ながらしばらく話しをした。
『綺麗だね。』
『だろ?オススメだけんな。』
『ありがとう。』
『おう。』
『どうしてオレをここに?』
『だってココ、恋人同士で行くと絶対に別れるって話しだから…。』
『ん?』
『でも絶景って話やったけんな。一度行って見たかったんだな。一人じゃ行きずらいやろ?』
『…………。』
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