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さっきまで苦しかった呼吸がだんだんと楽になってきた。それに、締め付けられているのに不思議と体も痛くない。
そうか…オレは死ぬのか。
目の前にはキメラが牙を剥き出しにしてオレを見ている。殺した後に食べるつもりなのかな?
佐々木さんはまだ車の中でもがいているなぁ。こんな時にツイてない人だ。いや、ツイてないのはオレのほうか…。
これといって目標はなかったけど、せめて普通の人生をおくりたかったなぁ…。
どうしてこんな事になったのかな?どうしてかな?オレはただあの時、優子といつもどおり楽しく下校していただけなのに。
優子?
…そうだ。優子の仇をとるためにオレはあの日から毎日生きてきたのだ。初めて人生のなかで目標をもって生きたのだ。
こんな所で死んでなんていられない。
オレに力さえあれば…力さえあればこの状況だって……。
゙力"が、ほしい……。
゙絶対的な力を与えてやろう"
幻聴と共にオレの目の前にぼんやりと男の姿が映った。
お前はあの時の男か…
゙ゆう…じ…くん……"
優子!!
………………。
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